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睡眠時無呼吸症候群に関するQ&A
- 睡眠時無呼吸症候群ってなんですか?
- 睡眠中に呼吸が止まる(もしくは低呼吸になる)ことをいいます。ただし、健康な人にも睡眠中の無呼吸は見られますので、一般的には10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上出現した場合に"睡眠時無呼吸症候群"と診断されます。『閉塞型』『中枢型』『混合型』の3タイプに分類され、このうち閉塞型が約8割を占めるといわれています。
- 眠っている間に激しい、苦しそうな「いびき」をかくといわれます。これは病気でしょうか?
- 軽いいびきそのものは病気とは考えられません。しかし、激しい、苦しそうないびきは睡眠を妨げ、大きな病気の原因になる可能性があります。特に『睡眠時無呼吸症候群』であることを示す重要なサインかもしれません。
- 「いびき」の原因はなんですか?
- 簡単に言えば「軽い窒息」です。もともとのどが狭い人で、睡眠時にのどが更に狭くなる、あるいは塞がる為におこります。のどの筋肉の緊張がゆるくなることが主な原因です。
- いびきは「ぐっすり眠っている健康的な証拠」ではないのですか?
- よくある誤解です。鼻と口をふさがれて眠っていられる人がいないように、「軽い窒息」であるいびきが続いている間は、なかなか深く眠ることができません。
- 窒息しかかっているのになぜ目覚めないのですか?
- いびきで窒息しかかって眠りが浅くなると、のどの筋肉の緊張が戻って、のどが再び開き息ができるようになるからです。(深く眠りそうになると窒息で起こされ、目覚めそうになると完全に目覚める直前に呼吸が再開し、また楽になって眠りに落ちる、しかし深く眠りそうになると・・・)という繰り返しで、よく考えるとかなり残酷な状態です。
- いびきの合間に息が止まっていると言われます。病気でしょうか?
- いびきの合間に10秒以上いびきが聞こえなくなり、その後また激しいいびきが繰り返される場合、「睡眠時無呼吸症候群」の可能性が極めて高いので専門医を受診し、検査することをお勧めします。
- 睡眠時無呼吸症候群の原因はなんですか?
- 閉塞型睡眠時無呼吸症候群は、いびきと同様に、睡眠時にのどがふさがる為起こります。苦しそうないびきをかいていることからも想像されるように、熟睡できなくなります。(眠っても眠っても改善できない睡眠不足)、これが睡眠時無呼吸症候群です。
- どんな症状が現れますか?
- 下記の項目が代表的なものです。チェックしてみてください。
大きないびき
朝眠くて起きられない
朝の頭痛
身体がだるい
睡眠時間が十分なのに昼間眠い
集中力の低下
性欲減退
夜間トイレに頻繁に通う
いらいら、怒りっぽいなどの精神不安定や性格の変化
以上のような自覚症状のある方は、1度専門医にご相談してみてはいかがでしょうか?ただし、必ずしもすべての人に症状が現れるわけではありません。非常に重症であっても全く自覚症状がなく、家族などに言われて初めてわかる場合もあります。 - 睡眠時無呼吸症候群によってどんな問題が起こりますか?
- 睡眠時無呼吸症候群の本質が『改善できない睡眠不足』であるため、以下の3つの問題点が指摘されます。
自覚症状
最も問題なのは、慢性的な睡眠不足のため、日中の眠気や集中力の低下につながることです。会議中に居眠りを繰り返したり、居眠り運転などで交通事故をよく起こしたりなどがあります。眠気のために仕事などで本来の力を発揮できず、治療してみて初めてそのことがわかったということもしばしばあります。車の運転や集中力を要する仕事の最中に眠くなって、重大な事故を起こす可能性があります。
早死
中等症以上の睡眠時無呼吸症候群になっている方は、一般の方と比べて寿命が短いことがわかっています。その原因は、慢性的な改善できない睡眠不足のために、高血圧・糖尿病・心不全・不整脈・脳卒中など色々な成人病にかかりやすくなることが原因と考えられています。呼吸が止まることによって起こる著しい酸欠状態も問題です。睡眠時無呼吸症候群は、働き盛りの大黒柱に多い病気ですので、家族にとっては、いびき以上に深刻な問題といえます。
いびきが他人の迷惑になる
他人の迷惑も勿論のことながら、実際には誰よりも本人がいちばん気にしているものです。 - 自覚症状が全くありませんので治療の必要性を感じないのですが?
- かなり重症の睡眠時無呼吸症候群であっても自覚症状が全くない人もいます。そのような人でも前項目の2で挙げた危険性があると現在では考えられています。したがって、自覚症状がないからといって安心はできません。大きな「いびき」あるいは呼吸停止をご家族や友人に指摘された場合などは専門医での検査を受けることをお勧めします。
- 私は太っていないので大丈夫ですか?
- 肥満は睡眠時無呼吸症候群を悪くすることがわかっています。ただし、日本人では、あごが小さいことが原因で、やせた人にもかなり多いことがわかっています。太っていないからといって無呼吸がないとは言えません。
- 睡眠時無呼吸症候群かもしれないと思ったら、どうすればいいですか?
- 早めに専門医を受診し、検査することをお勧めします。一般的には、病院で1泊ないし2泊し、PSG(ポリソムノグラフ)という機械を使って睡眠状態、呼吸状態、いびき、眼球運動、などを調べ、本当に睡眠時無呼吸症候群なのかを確認します。
- 検査に痛みなどはありますか?
- 一切ありません。身体にセンサーを装着しますが、針で刺すなどの痛みを伴うようなものはありませんので、ご安心ください。
- 入院は必要ですか?
- 前ページにもあるように、基本的には入院をして睡眠状態を調べる検査が必要です。できるだけ仕事に差し障らないように工夫をしてくれますので、専門医にご相談ください。入院しない方法としては「簡易型ポリソムノグラフ」と呼ばれる、自宅に持ち帰る器械がありますが、機種によっては感度が悪いなどの問題があるため、睡眠時無呼吸症候群でありながら見逃される可能性があります。
- 治療方法はありますか?
- CPAP(シーパップ)という機械を使い、鼻マスクを通して一定圧の空気を送り、のどがふさがるのを防ぐ『CPAP療法』が推奨されます。保険診療が可能です。そのほか、マウスピースやのどの手術も用いられます。ただし、それぞれの治療法には長所と欠点があり、人によって最適な治療法が異なりますので、専門医にご相談ください。
- 鼻の手術、あるいは鼻の穴を拡げる治療ではダメでしょうか?
- CPAPが開発される前にはしばしば行われていた治療法ですが、睡眠時無呼吸症候群でふさがっている場所は鼻ではなく「のど」ですので、効果は間接的です。鼻づまりが睡眠時無呼吸症候群を悪化させることがありますが、鼻の治療だけで良くなることは(ごく一部を除き)あまりありません。しかし、他の治療と併用することで効果を発揮することがありますので、詳しくは専門医にご相談ください。
- 以前にも睡眠時無呼吸症候群と診断され、手術を受けたことがありますが、治っていない(あるいは再発した)と家族に言われます。そんなことがあるのでしょうか?
- 手術療法はCPAPが開発される前から行われている治療法ですが、成功率が低いこと、成功したように見えても再発することがあることが問題とされています。このような時には通常CPAP療法を行う必要があります。よくある事態ですので、CPAP療法ができる専門病院を受診してください。
最後に、睡眠時無呼吸症候群はコントロールできる病気です。適切な治療により、質の高い睡眠、さわやかな朝、眠気のない活動的な生活を取り戻すことができます。また、成人病のリスクを減らし、寿命をも回復することが可能になります。しかし重症でありながら自覚症状がないこともあります。睡眠中の呼吸停止や大きな、あるいは苦しそうな「いびき」があれば、専門医にご相談ください。
監修:KKR札幌医療センター 呼吸器科医長 斎藤拓志